お葬儀コラム
宗教と宗派とは、そもそもどう違うのかというと、例えるなら、国と市だと考えてみてはいかがでしょうか。
[宗教]日本という国の、[宗派]愛媛県という県民性や考え方、特産品などがあり、地域によっても大きく異なる文化があるとお考えいただくと、イメージしやすいと思います。
さまざまな宗教・宗派があり、さらに地域や親族の中でも異なります。
今回は、宗教と宗派についての違いを日本における代表的な宗教をご説明いたします。
宗教における葬儀の分類
宗教における葬儀の分類とは大きく分けると、
【仏式】仏教による葬儀
【神式】神道による葬儀
【キリスト教式】キリスト教による葬儀
【無宗教】無宗教による葬儀
こちらの4つが挙げられます。
仏式
特に日本では仏式が約9割と言われており、仏式の中でもさらに大きく分けると7つの宗派があります。
【天台宗】【真言宗】【浄土宗】【浄土真宗】【臨済宗】【曹洞宗】【日蓮宗】
宗派によって考え方や、葬儀の流れなども変わってきます。
天台宗
- お焼香
- 1~3回
- お線香
- 1本または3本
1本:真ん中にたてる
3本:手前1本、奥に2本 - 通夜、葬儀の
ご香典表書き - 御霊前・御香典
- 葬儀の特徴
- 3つの儀式によって葬儀が執り行われる。その一つが「阿弥陀経」を読み上げ、阿弥陀如来に救いを求め故人が極楽浄土へ往生するように願う儀式
真言宗
- お焼香
- 3回
- お線香
- 3本
- 通夜、葬儀の
ご香典表書き - 御霊前・御香典
- 葬儀の特徴
- 「灌頂」という故人の頭に水をそそぎ仏の位に入れるようにする儀式や、苦悩を取り除くとされる「土砂加持」という特徴的な儀式がある
浄土宗
- お焼香
- 定めなし
- お線香
- 1本
- 通夜、葬儀の
ご香典表書き - 御霊前・御香典・御香料
- 葬儀の特徴
- 心の闇が破られ幸福を得た時に感謝を示す「南無阿弥陀仏」という御礼の念仏を参列者も葬儀の際に唱え、故人を阿弥陀様の極楽浄土にお送りする儀式
浄土真宗
- お焼香
- 額にいただかず1回
- お線香
- 1本を折って寝かせる
- 通夜、葬儀の
ご香典表書き - 御仏前・御香典
- 葬儀の特徴
- 亡くなるとすぐに極楽浄土にいくという考え方で、またすべての人々は死後に仏様となって再会できるため、お別れを告げる儀式「告別式」という言葉を使用せず「葬儀」という
臨済宗
- お焼香
- 額にいただかず1回
- お線香
- 1本
- 通夜、葬儀の
ご香典表書き - 御霊前・御香典
- 葬儀の特徴
- 葬儀の際に、導師が「喝」と叫び、亡くなられた方の現世に対する未練を取り除き、仏の世界へといざなう意味がある。松明に見立てた棒を掲げる
曹洞宗
- お焼香
- 額に1回あげ、2回目は額にいただかない
- お線香
- 1本
- 通夜、葬儀の
ご香典表書き - 御霊前・御香典
- 葬儀の特徴
- 3人の僧侶が「鐃祓」や、「引磐」という鳴り物、そして太鼓を鳴らし、故人が仏の世界へと導かれていくことを盛大に表現することで遺族の悲しみを優しく包む
日蓮宗
- お焼香
- 額にいただかず1~3回
- お線香
- 1~3本
- 通夜、葬儀の
ご香典表書き - 御霊前・御香典
- 葬儀の特徴
- 参列者も「法華経の内容をすべて信じて帰依する」という意味の「南無妙法蓮華経」と題目を唱え、故人を霊山浄土へ旅立たせる儀式
特に参列者が気を付けるのは、ご香典の表書きを浄土真宗とその他の宗派では考え方が大きく異なる事です。
浄土真宗以外の宗派は、四十九日を過ぎてから故人が仏様になると考えられているので「御霊前」と記載するケースが多いのですが、浄土真宗の考えでは亡くなってすぐに極楽浄土へ逝かれ仏様になると考えられているため、「御仏前」や「御香典」と書きます。
宗派が分からない場合は、「御香典」と記載するのが一番無難といえます。
宗教が分からない場合が、全宗教に通じる「御霊前」にするといいでしょう。
また、ご焼香の際は先方の宗派に合わせての作法をしてもいいですし、先方の作法が分からない場合はご自身の宗派の作法で行っていただいても問題ありません。
神式
神式は、仏教のように考え方の事なる宗派に分かれていないため、葬儀の流れも地域によって多少異なる事はありますが、流れは同じ儀式を行います。
仏教と神道の考え方の違いの一つに、仏教は故人が仏様になる考えですが、神式は故人を家に留め守護神にするための儀式とされています。
その他にも、葬儀を行う場所についても異なります。
仏教の場合は斎場や自宅だけでなく、お寺で執り行われる場合があります。しかし、神道の場合は死を「穢れ」とみなし、神が祀られている場所に持ち込まないように、斎場あるいは自宅で行われ、また戒名がありません。
また、仏式の法要のように複数回儀式を行う事はなく、五十日祭と呼ばれるものが存在するだけとなっています。
参列の際のマナー
斎主・喪主・遺族・親族・参列者の順に、「玉串奉奠」という儀式を行います。
(玉串(榊の枝に木綿(ゆう)といわれる麻や紙垂という白い紙片をつけたもの)を供える儀式。)
- ①玉串の枝元を右手かで上から持ち、左手で葉をしたから支えるようにして、神職から受けとる。
- ②目の高さでおし頂き、右手のひらを返して玉串うぃ時計回りに回転させ、枝元を祭壇に向けて供える。
- ③2,3歩後ずさりし、「しのび手(音を立てない拍手)」で二礼・二拍手・一礼を行う。
香典の表書き
神式葬儀でも、「御霊前」の表書きを使う事ができます。
神式独特の表書きとして、「玉串料」「御玉串料」「御神饌料」「御榊料」というものが代表的です。
また、薄墨を使って書くのがマナーとなれています。
キリスト教式
キリスト教では、死は終わりではなく魂は神のもとに召され、永遠の命が始まるとされており、葬儀では死者ではなく神に祈りを捧げます。
また、神以外の誰かに祈ることは問題とされているので、焼香は禁じられています。その代わりに、一輪の献花をさせていただくことが一般的な作法です。
キリスト教は、主にカトリックとプロテスタントにわかれ、それぞれの儀式の流れや考え方が異なります。
プロテスタント
- 考え方の特徴
- 故人は神のもので安らかになるという考えがあるため神に捧げる祈りが中心。神に感謝し、遺族を慰めることに重きをおいて式が進む
- 聖職者
- 牧師
- 礼拝で歌われる歌
- 讃美歌
- 不祝儀袋
- 「献花料」「忌慰料」「御花料」「御霊前」百合の花や十字架がデザインされている不祝儀袋
カトリック
- 考え方の特徴
- 故人の罪を神に詫びて許しを請い、永遠の命を得られるように祈る。「言葉の典礼」とパンや葡萄酒などを祭壇に奉納するミサが中心。
- 聖職者
- 神父
- 礼拝で歌われる歌
- 聖歌
- 不祝儀袋
- 「御ミサ料」「御花料」百合の花や十字架がデザインされている不祝儀袋
無宗教
無宗教とは、自由な形式で宗教的な儀式や習わしにとらわれない葬儀のことで、自由葬などとも言われています。
日本では仏教で葬儀を執り行うことが一般的でしたが、昨今では宗教の希薄化や、「故人らしい」送り方をしたい方、堅苦しくないお別れ会のような形式を希望される方、費用面を抑えたい方など、さまざまな理由から一定数の割合で増えています。
無宗教の葬儀の流れ
進行は司会者や葬儀社のスタッフによって進められ、お経を読む代わりに全員で黙祷を行ったり、故人の経歴の紹介をしたり、届いた弔電の読み上げなどを行います。
また、焼香や、故人に向けて献花を供えたりします。
無宗教の葬儀の費用
無宗教では僧侶を呼ばない為、お布施を渡す必要がありません。
葬儀全体の費用は抑えられる傾向はありますが、葬儀場で行う場合の使用料やお棺や骨壺など必ず必要なものも多々あり、またお葬儀の際に行いたい内容によって変わってきます。
香典のマナー
無宗教でも、香典の表書きをする必要があります。
表書きは「御霊前」や「御花料」とし、薄墨を使って書きます。
宗教・宗派についてご説明しましたが、仏教という一つの宗教だけでも数知れないほどの宗派が存在しています。
宗教に関して希薄になっている現実もあり、親族の葬儀に参列する際にはじめて自身の家の宗派を知るという事も少なくありません。
いざという時に困ったり、恥をかいたりすることのないよう、大まかな特徴を知っているといいでしょう。